「中村屋サロン アーティストリレー」は2018年より始めた、作家の紹介でつなぐ展覧会です。
明治末から昭和初期にかけて、新宿中村屋には彫刻家、萩原守衛(碌山(ろくざん))や画家の中村彝(つね)、書家の會津八一を中心に、人と人、心と心のつながりにより、多くの芸術家たちが集いました。
その様子は後に「中村屋サロン」と称され、日本近代美術史にその名が刻まれています。
本展ではその事象を作家同士のリレーという形で今に表すとともに、新進芸術家に発表の場を提供いたします。
毎年2名に参加頂き、それぞれ次年に展示するアーティストを指名して頂くことで、「中村屋サロン」のようにつながりを広げていきます。
前回展示作家の美術作家 安部典子さん と 現代美術家 富田菜摘さんからそれぞれバトンを渡された、美術作家の宮森敬子さんと彫刻家の三宅一樹さんを迎えて開催されます。
本展では、日系人として戦争を経験した御祖母様の人生に思いを馳せ、5つのテーマに分けて展観します。
宮森さんが作り出す幻想的な風景から、私たちはどのようなメッセージを受け取ることになるでしょうか。
《祖母マツノの肖像》2021年
Photo:中川達彦
1 ギャラリートーク 配信日時 2023年3月1日(水) AM10:30 配信予定
2 対談 宮森敬子 X 港千尋(写真家) 配信日時 2023年4月3日(月) AM10:30 配信予定
今年98歳になる父の部屋にあった、私の母方の祖母の籐椅子を数年前に譲り受けた。
日系2世アメリカ人としてハワイに生まれた祖母は、親の都合で17歳の時に日本に渡り、同時通訳として働き、結婚して3人の子を持った。
ところが長女(私の母)が7つの時、日本とアメリカは戦争を始める。
敗戦後、渋谷の自宅に引きこもって過ごした彼女は、いつも穏やかで、戦争の不条理について語ることはなかった。
そんな彼女が、実はアメリカのパスポートを更新し続けていたことを知っとき、一日中籐椅子に座って過ごしていた晩年の彼女の目に映っていた風景は、一体どのようなものだったのかを想像するようになった。
展覧会のタイトル『記憶の海、Roseのプライド』の“Rose”は、愛や誇りを表すバラのRoseであると同時に、祖母のように日系2世であるが故に人生を翻弄された「東京ローズ」のRoseにもかけている。
お嬢様育ちでアルコール中毒症に悩むことになる、昭和生まれの生真面目な母。
軍人教育を受け、戦後は高度経済成長に尽くした大正生まれの父。
戦後に生まれ、アメリカ人と家族になった私。
昭和を生きた家族それぞれの物語が、流れ着く「記憶の海」。
あらゆる運命と折り合いをつけ、愛を手放さずに生き抜く意志としてのRoseに出会うことができるだろうか。
それぞれのRoseを自分の中に感じることは、葛藤の時代の希望ともなり得るのではないだろうか。
宮森敬子
第5回は、前回展示作家の現代美術家 富田菜摘さんからバトンを渡された、彫刻家の三宅一樹さんです。 三宅さんは、敬愛する荻原守衛(碌山)がフランスで制作した彫刻作品《坑夫》を、当館へ足を運び様々な角度でデッサンし模刻することで、 碌山作品の真髄を理解しようと試みました。それら碌山研究の成果と、心を込めて御神木を刻んだ神像彫刻シリーズやYOGAシリーズ、聖猫シリーズなどが一堂に会します。
三宅作品が織りなす神聖な世界に包まれるでしょう。
《碌山研究ー小坑夫》2022年
1:ギャラリートーク 配信日時 2023年4月19日(水) AM10:30 配信予定
2:アトリエ訪問 配信日時 アトリエ「榧乃舎」訪問 2023年4月24日(月) AM10:30 配信予定
「拝啓、碌山殿。あなたが切り開いた彫刻の道を、私はしっかりと継承し、歩めておりますでしょうか。」
日本近代彫刻のパイオニア・荻原守衛(碌山)。その彼を支え、活動の拠点であった中村屋サロン。
この聖地のような特別な場にて展覧会のバトンを受けた私は、現代彫刻家として、敬愛する碌山をあらためて深く考える好機をいただいた気が致しました。
今では誰もが知る碌山の作品《坑夫》。パリの美術学校の彫刻アトリエで制作されたその塑像に、単なる習作以上の大きな芸術性を看取したのが高村光太郎でした。2人のその歴史的な背景を脳裏に浮かべながら、私は《坑夫》をデッサンし、模刻を試みました。
彫刻真髄を求めた碌山の、その真摯な制作姿勢と情熱を、ほんの一欠片でも追体験したかったのです。彫刻の本質を、現代彫刻家である私はどのように咀嚼し、追随し、展開してきているのかを、この聖地・中村屋サロン美術館での個展にて、自問したいと思いました。
この碌山研究の試みが、また次世代へと、正統派彫刻のバトンを繋げられることを夢見ています。
三宅一樹
宮森敬子(みやもり けいこ) 展「記憶の海、Roseのプライド」
2023年3月1日(水)~4月9日(日)
三宅一樹(みやけ いっき) 展 「拝啓、碌山殿。」
2023年4月19日(水)~5月28日(日)
10:30~18:00(最終入館17:40まで)
毎週火曜日、3/22(水) (但し3/21(火)は開館)
*4月10日(月)~18日(火)は展示替えのため休館
300円
※高校生以下無料(学生証をご呈示ください)
※障害者手帳ご呈示のお客様および同伴者1名は無料
※リピート割引有り(会期中に当企画展の半券呈示で100円割引)
中村屋サロン美術館
〒160-0022 東京都新宿区新宿三丁目26番13号 新宿中村屋ビル3階
<アクセス>
JR:新宿駅東口から徒歩2分
東京メトロ丸ノ内線:新宿駅A6出口直結
※駐車場はございませんのでご了承ください
TEL 03-5362-7508
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取材日:2022年3月2日(水)