新宿の魅力

四谷

四谷荒木町
正統も邪道も包み込む

能町 みね子
漫画家兼エッセイスト、イラストレーター。新宿区神楽坂在住。最新刊「能サポ」「能スポ」「きまぐれミルクセ~キ」発売中。ラジオ・テレビ番組への出演多数。
荒木町は、谷底にたまる 
人の念を酒で昇華するのだ。

かつて花街だった荒木町。町内の杉大門通り、車力門通りなどには小さな飲み屋がぎっしりと並んでいて、再開発の手もさほど伸びていない。庶民的な部分はあるけど軽薄さはない、酒の分かるオトナの街というイメージです。

小さな地域なのに土地の高低差は激しく、えぐれたような谷底にかつて景勝地だった策の池が今も残り、それを取り巻くように細い路地や階段が迷路のように張り巡らされる。飲み屋街から外れて坂を下っていくと少しずつ店の灯りは少なくなるけれど、完全に住宅地になるわけでもない。町内を貫く外苑東通り沿いには焼肉屋やラーメン屋の名店も立ち並んでいるし、全貌がつかみづらい街。飲むより前に、散歩して楽しい街であることはまちがいない。

街外れの、靖国通りに近い坂の下の裏通りには入口のタイル張りが非常に美しい第二歯朶ビルという建物があり(ビルの名前もいい)、その奥にあるバル「オフビート」は、その本気度からしてほぼ「本格カレー屋」です。絶品インドカレーと、なぜか取りそろえのいい日本酒の組み合わせは意外とイケます。

ゆるゆると坂をのぼって街の真ん中に戻り、すっかり街に定着した「坊主バー」に行ってみます。現役のお坊さんがマスターを務めるここは開店16年。すっかり定着したけど、店内に仏壇を完備し、法話が聞けるイロモン的な(失礼)部分はバリバリ現役。一番人気のカクテル「極楽浄土」のヘブンな色を楽しんでいたら、かき混ぜないとお酒が下に溜まりますよと優しく説かれました。

ラストは「ロック伝道所」こと「dagaya」。ビンテージギターが照らされた地下で重めの音でロックを聴き、名古屋出身のマスターならぬ「リーダー」のお茶目なノリに触れる。自作曲をお願いしたら、照れながらもしっかり聴かせてくれるリーダー。荒木町は、そっけないオトナのような顔をして、誰でも受け入れてくれる街だな。

夜遊びもほどほどにニャ
今回のNight Watch
デイリースパイス&バル オフビート/
新宿区荒木町16 第二歯朶ビル1F(写真1~4)
坊主バー/
新宿区荒木町6 AGビル2F(写真5~9)
イル・バッショ/
新宿区荒木町6 ルミエール四谷2F(写真10~11)
ロック伝道所BAR dagaya/
新宿区荒木町1-2 なかばやしビルB1F(写真12~17)
その他の写真は、どこにあるか実際に街を歩いて見つけよう!

新宿plus vol.6 2017年3月発行 能町みね子のSHINJUKU Night Watch

NIGHT WATCH IN OCHIAI
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